Journal of Forest Research Vol 14, No 1 (2009年2月)

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種類: 総説/環境
Title:  A review of tower flux observation sites in Asia
巻頁: J For Res 14 (1):1-9
題名: アジアにおけるタワーフラックス観測の現状
著者: 溝口康子、宮田明、大谷義一、平田竜一、油田さと子
所属: 森林総合研究所気象環境研究領域
抄録: アジアにおけるタワーフラックス観測網の展開を考える上で重要な、フラックスサイト情報の集約と整理を行った。アジアには少なくとも51の森林サイトを含む109の長期観測サイトが存在し、欧米に比べて新規サイトが多いのが特徴である。今後、観測データの蓄積が期待される。アジアの特徴である照葉樹林および水田のサイト数は十分とはいえず、観測の充実を図る必要がある。フラックス観測データは、フラックス研究者間のみならず、リモートセンシングなどの異分野の研究者からの要求度も高い。データの質・量の両面で一層の充実が求められる。

種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title:  Application of high-resolution airborne data using individual tree crowns in Japanese conifer plantations
巻頁: J For Res 14 (1):10-19
題名: 高分解能航空機データを用いた針葉樹人工林の単木樹冠抽出の適用
著者: 加藤正人、François A. Gougeon、Donald G. Leckie
所属: 信州大学農学部アルプス圏フィールド科学教育研究センター
抄録: 私たちは高分解能航空機データを使用して、日本の針葉樹人工林を単木樹冠抽出法(ITC法)で解析した。本研究は日本の森林に、当該手法を適用した最初の事例である。本研究で以下のことを明らかにした。1.日本の針葉樹の単木樹冠抽出が可能であった、2.ヒノキ、アカマツ、カラマツ、スギおよび広葉樹の樹冠を樹種分類した、3.単木樹冠情報、疎密度区分図、本数密度図をもとに、森林現況区分図をゾーニングした、4.現況区分のポリゴン情報に画像分類結果の属性情報を追加した、5.画像分類の樹種別抽出本数について、現地調査と比較した結果、5つのプロットの誤分類は0.3~30.2%だった。誤分類が多い林分は間伐が遅れた高密度林分、広葉樹と針葉樹が混交する林分であった。一方、樹冠直径が6.2m以上ある林分の抽出誤差は11.6%以下と低かった。本手法は、単層林で、疎密度が中庸から疎の針葉樹人工林への適用が最適である。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Dynamics of physicochemical properties and occurrence of fungal
fruit bodies during decomposition of coarse woody debris of Fagus crenata
巻頁: J For Res 14 (1):20-29
題名: ブナ粗大枯死材の分解にともなう材の物理化学性の変化と菌類子実体の発生パターン
著者: 深澤 遊、大園享司、武田博清
所属: 京都大学大学院農学研究科
抄録: 冷温帯の優占樹種であるブナの粗大枯死材の分解過程を菌類群集の分解機能から説明することを目的として、野外における枯死材の分解過程と菌類遷移の記述を行った。調査は、京都府北部のブナ天然林にて行った。47本の立枯れと66本の倒木(材直径13−73 cm)を調査対象とした。はじめに、ブナ枯死材の分解段階に沿った材の密度、含水率、有機物組成、窒素量の変化パターンを明らかにした。次に、材有機物の機能的な分解者と考えられている担子菌や子嚢菌の子実体の発生パターンをブナ枯死材の分解段階に沿って明らかにし、材の物理化学性との対応関係を明らかにした。これらの結果から、ブナ粗大枯死材の分解過程はリグニンを含む酸不溶性残渣およびホロセルロースが同時に分解される期間と、それに続くホロセルロース選択分解の期間に分けられた。白色腐朽性の菌類、特に担子菌に属するツキヨタケが、同時分解の期間に高頻度で発生し、この期間における重要な材分解者であることが示唆された。一方、ホロセルロース選択分解の期間に高頻度で発生した菌類は過去の研究からホロセルロースを選択的に分解するとは考えにくく、この期間の材分解機構は未知のまま残された。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Forest fires and vegetation during the Holocene in central Yakutia, eastern Siberia
巻頁: J For Res 14 (1):30-36
題名: 東シベリア、中央ヤクーチアにおける完新世の森林火災と植生
著者: 片村文崇、福田正己、Nikolai P. Bosikov、Roman V. Desyatkin
所属: 京都府立大学大学院生命環境科学研究科
抄録: シベリアの亜寒帯林における植生変遷と森林火災の関係について明らかにするために、東シベリアの中央ヤクーチアにおける2つの湖から堆積物を採取し花粉分析および炭化片分析を行った。花粉分析より明らかになった植生変遷は、中央ヤクーチアにおける他の湖の結果と同様であった。すなわち、晩氷期から完新世初期にかけて、カラマツの疎林が優勢であり、その後、完新世中期にヨーロッパアカマツの分布が拡大した。炭化片分析の結果、低量の微粒炭が継続して産出することから、現在中央ヤクーチアで見られるような地表火タイプの森林火災が、少なくとも6500年前(cal yr BP)以降継続し、樹冠火のような火災は起きていなかったことが明らかとなった。

種類: 原著論文/生物-生態
Title:  Basal area growth and mortality of Betula maximowicziana affected by crown dieback in a secondary forest in Hokkaido, northern Japan
巻頁: J For Res 14 (1):37-43
題名: 北海道の広葉樹二次林におけるウダイカンバ樹冠衰退木の胸高断面積成長と枯死
著者: 大野泰之、梅木 清、渡辺一郎、滝谷美香、寺澤和彦、八坂通泰、松木佐和子
所属: 北海道立林業試験場
抄録: ウダイカンバ樹冠衰退木が存在する広葉樹二次林に対する間伐方法を検討するため、217個体のウダイカンバを対象に4年間(1999-2003)の胸高断面積(BA)成長量と枯死状況を調査した。個体のBA成長量と枯死率は、ともに期首における樹冠衰退の程度と二方向的競争効果によって影響されており、樹冠衰退の程度が大きく、強い二方向的競争効果を受けていた個体ほど、BA成長量は小さく、枯死に至りやすかった。

種類: 短報/環境
Title:  Temperature controls temporal variation in soil CO2 efflux in a secondary beech forest in Appi Highlands, Japan
巻頁: J For Res 14 (1):44-50
題名: 安比高原のブナ二次林における土壌CO2フラックスの時間変動に対する地温の影響
著者: 橋本 徹、三浦 覚、石塚成宏
所属: 森林総合研究所立地環境研究領域
抄録:森林は、生物圏における巨大な炭素貯蔵庫であり、森林生態系における炭素循環を理解するためには、土壌CO2フラックスの動態を解明することが重要である。本研究では、土壌CO2フラックスの時間変動を記述し、それに影響する環境要因を調べた。4基の自動開閉チャンバーを用いて、積雪期を除く2年間、岩手県の安比高原にあるブナ二次林で継続的に土壌CO2フラックスを測定した。深さ5cmでの地温と土壌体積含水率も同時に測定した。土壌CO2フラックスは14 mg CO2 m-2 h-1から2,329 mg CO2 m-2 h-1の幅で変化し,8月始めにピークとなった。地温と土壌CO2フラックスの関係は指数関数式でよく表された。土壌CO2フラックスの時間変動は、土壌体積含水率よりも地温でよく説明された。Q10値は3.7 ± 0.8で、推定年間炭素放出量は837 ± 210 g C m-2 year-1だった。これらの結果は土壌CO2フラックス予測モデルを開発する上での基礎データとなる。

種類: 短報/生物-生態
Title:  Distribution and stem growth patterns of mangrove species along the Nakara River in Iriomote Island, Southwestern Japan
巻頁: J For Res 14 (1):51-54
題名: 西表島仲良川流域におけるマングローブ植物の分布と成長パターン
著者: 榎木 勉、上田萌子、南木大祐、諏訪練兵、萩原秋男
所属: 九州大学演習林
抄録: 西表島の仲良川流域において、マングローブ林の構造と樹木の成長を、河口から川上、川岸から内陸という2つの傾度に沿って調べた。オヒルギは潮間帯全域に分布していたが、ヤエヤマヒルギとメヒルギは上流には分布していなかった。オヒルギの胸高断面積合計、最大樹高は川上から川下に向かって減少し、川岸から内陸に向かって増加した。オヒルギの直径成長量は川下ほど小さかった。ヤエヤマヒルギの胸高直径および直径成長量は川岸ほど大きかった。

種類: 短報/生物-生態
Title:  High nitrate reductase activity in sprouts of Phyllostachys pubescens
巻頁: J For Res 14 (1):55-57
題名: モウソウチク成長期における硝酸還元酵素活性の配分
著者: 上田実希、徳地直子、小川 遼
所属: 京都大学大学院農学研究科
抄録: モウソウチクは数ヶ月の間に数十mにおよぶ稈を完成させることが知られている。しかし、この著しい成長に伴う窒素代謝についてはほとんど明らかになっていない。本研究では植物が硝酸態窒素同化の律速となる反応を触媒する硝酸還元酵素の活性であるNitrate Reductase Activity (NRA)をモウソウチクの各器官(葉・細根・枝・稈・地上に出たばかりの筍・筍の皮)について測定した。その結果、筍のNRAが著しく高く、成長が著しい筍において硝酸還元が盛んに起こっていることが示唆された。さらに、筍の皮においても他の器官に比べて高いNRAが検出されたことから、筍の成長途中で脱落する筍の皮も硝酸還元の場として重要である可能性が示唆された。

種類: 短報/生物-生態
Title:  An alternative of soil scarification treatment for forest restoration: effects of soil replacement
巻頁: J For Res 14 (1):58-62
題名: 森林の再生を目的とした掻き起こし施業における表土戻しの効果
著者: 青山圭一、吉田俊也、紙谷智彦
所属: 北海道大学大学院環境科学院
抄録: 無立木ササ地を森林に転換させるために北海道で広く行なわれてきた「掻き起こし」施業を改善するために、いったん掻き起こした表土を施工地に敷き戻す「表土戻し」を試行し、7年目の状況を調査した。施業の効果はきわめて明瞭で、処理区の胸高断面積合計は、対照区(通常の掻き起こし施業地)に比べて約150倍に達していた。高い立木密度と成長率の高さは、ともに、土壌条件の改善(深く、適度な硬度で、養分に富んだ土壌の形成)によると考えられた。ただし、処理区の立木の種構成は、対照区と同様、ほぼダケカンバで占められており、当初期待した、埋土種子を形成するタイプの種群の増加は認められなかった。本研究の結果は、蓄積の回復を主目的とした場合、表土戻しが有効な代替手法になることを示した。

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