Journal of Forest Research Vol 16, No 4 (2011年8月)
種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title: Derivation of two-way volume equation for bamboo, Phyllostachys pubescens
巻頁: J For Res 16 (4): 261-267
題名: モウソウチクにおける二変数材積式の誘導
著者: 管秀雄,井上昭夫,北原文章
所属: 熊本県立大学環境共生学部
抄録: モウソウチクにおける二変数材積式を誘導した。この材積式は2つの仮定に基づいて誘導した。1. 相対稈形はKunze式によって表される。2. 異なる2つの相対高における正形数は、稈サイズとは無関係に一定である。モウソウチク林において200本の稈についてデータを収集し、それらをモデリングデータと検証用データとに二等分した。モデリングデータについて、相対高0.6と0.9における正形数は、それぞれ0.908と0.448で安定していた。これらの値に基づいて、材積式のパラメータを決定した。検証用データについて、求めた材積式に稈高と胸高直径の値を代入し、みかけの稈材積を推定した。推定された稈材積の平均誤差とRMSE誤差は、それぞれ8.120×10−5 m3と3.291×10−3 m3であった。本研究において誘導した材積式は、モウソウチクにおける稈材積を推定する上で有効である。
種類: 原著論文/環境
Title: Aboveground productivity of an unsuccessful 140-year-old Cryptomeria japonica plantation in northern Kyushu, Japan
巻頁: J For Res 16 (4): 268-274
題名: 九州北部の140年生不成績スギ造林地における地上部の生産性
著者: 榎木勉,井上貴文,田代直明,石井弘明
所属: 九州大学大学院農学研究院
抄録: 140年生のスギ放棄人工林において、地形がバイオマス生産に与える影響を明らかにするために、地上部バイオマス、バイオマス増加量、リターフォール量を測定した。この人工林は不成績であり、バイオマス全体(400.2 Mg ha−1)の93.4% (374.2 Mg ha−1)を天然更新した広葉樹が占めた。地上部バイオマスは斜面の下部ほど小さく、バイオマス増加量およびリターフォール量も斜面の下部ほど小さかった。スギのバイオマスの斜面位置による違いはなかった。広葉樹のバイオマス増加量およびリターフォール量は斜面の下部ほど小さかったが、バイオマスあたりのバイオマス増加量およびリターフォール量は斜面下部ほど大きかった。スギのバイオマス増加量は凸状地ほど小さかったが、広葉樹のバイオマスとリターフォール量は増加した。広葉樹のリターフォール量はスギのバイオマスが大きいところでは小さかった。このことは残存するスギのバイオマスは小さいが、広葉樹の分布や生産性に負の影響を与えていたことを示唆する。林分全体の地上部バイオマスは他の高齢スギ造林地と同程度であった。広葉樹の地上部バイオマスの違いは地形により決定されるが、広葉樹の生産性はスギとの相互作用の影響を受けると推察された。
種類: 原著論文/環境
Title: Effects of afforestation on soil organic matter characteristics under subtropical forests with low elevation
巻頁: J For Res 16 (4): 275-283
題名: 標高の低い亜熱帯林の土壌有機物の形質に及ぼす造林の影響
著者: Shih-Hao Jien, Tsai-Huei Chen, Chih-Yu Chiu
所属: Biodiversity Research Center, Academia Sinica, Taiwan
抄録: We selected sites of natural broad-leaved forests and adjacent coniferous plantations (Cunninghamia konishii and Calocedrus formosana of 30 and 80 years old, respectively) in central Taiwan to evaluate the effects of plantations on soil organic matter (SOM) characteristics and composition. SOM was characterized by chemical analyses, solid-state 13C cross-polarization magic-angle nuclear magnetic resonance (CPMAS 13C NMR), and optical measurements. Semiquantitative analysis of CPMAS 13C NMR spectra showed the litter of broad-leaved forests to be less resistant to decomposition than that of coniferous forests. The humification degree of SOM was higher under broad-leaved than coniferous forests because of the relatively high percentage of aromatic C and carboxyl C in the humic acids (HAs) of A horizons under broad-leaved forests. Additionally, the E4/E6 ratio of HAs was lower in the A horizon under broad-leaved than coniferous forests, which reflected more condensation of SOM. High alkyl C content under coniferous forests could be attributed to needle litter quality, which has a high content of waxes or lipids. Afforestation with conifers induced accumulation of the litterfall layer, gradually increased SOM concentrations, and changed the composition structures of SOM in the topsoils.
種類: 原著論文/生物-生態
Title: Fine-root dynamics in a young hinoki cypress (Chamaecyparis obtusa) stand for 3 years following thinning
巻頁: J For Res 16 (4): 284-291
題名: ヒノキ若齢林における間伐後3年間の細根動態
著者: 野口享太郎,韓慶民,荒木眞岳,川崎達郎,金子真司,高橋正通,千葉幸広
所属: 森林総合研究所四国支所
抄録: 細根は森林生態系の炭素・養分循環において重要な要素であるが、間伐などの森林施業が細根動態に与える影響については不明な点が多い。そこで本研究では、10年生ヒノキ林分において、間伐後の3年間における細根の生産および枯死脱落速度を調査した。細根の伸長は、間伐区と対照区の両区において3月から12月にかけて見られ、季節変動していた。1年間の細根生産速度は、間伐区と対照区でそれぞれ101および120 g m−2 yr−1、細根の枯死脱落速度は間伐区と対照区でそれぞれ77および69 g m−2 yr−1と推定された。間伐後3年を経過した間伐区の生細根量(143 g m−2)は対照区(218 g m−2)よりも有意に小さかったが、枯死細根量に有意差は見られなかった(147および103 g m−2)。また、細根の形態指標である直径、比根長、密度は、間伐区と対照区で同様であった。以上の結果から、細根の現存量や生産量は間伐により減少する傾向を示すが、間伐が細根の性質に与える影響は小さいと考えられた。
種類: 原著論文/生物-生態
Title: Process to extinction and genetic structure of a threatened Japanese conifer species, Picea koyamae
巻頁: J For Res 16 (4): 292-301
題名: 絶滅危惧針葉樹ヤツガタケトウヒの絶滅過程と遺伝的構造
著者: 勝木俊雄,島田健一,吉丸博志
所属: 森林総合研究所
抄録: ヤツガタケトウヒは最終氷期の遺存種として日本に点在し、現在絶滅が危惧されている。このヤツガタケトウヒ9集団の集団構造と遺伝構造について調査した。ヤツガタケトウヒは0.5-11.5 haの範囲に9-135個体が存在する集団をつくり、ササ林床をもつ1集団を除きすべての集団で実生と若木が確認された。5座の核SSRマーカーを用いた解析によると、分布域の端に位置する八ヶ岳の集団の有効対立遺伝子数(Ne)は1.8-2.7であり、分布域の中心となる南アルプスの集団の2.8-4.3より小さかった。八ヶ岳の集団は孤立化したことによって遺伝的変異が減少したことが示唆された。ヤツガタケトウヒの遺伝子分化係数(G’st)は0.410で、日本の針葉樹と比較すると高い傾向が示され、分断化と近親交配が進んでいると考えられた。特に八ヶ岳の孤立化した2集団の近交係数(Fis)は0.315-0.354と、他の集団の値(0.188-0.263)よりも高かった。この2集団は近親交配が進みながら何世代も更新してきたと考えられた。しかしもっとも実生密度が高い集団はこの遺伝的多様性が低く近交係数が高い集団であった。現段階のもっとも深刻な問題は、母樹数の減少と稚樹定着環境の悪化であると考えられた。
種類: 原著論文/生物-生態
Title: Wood-boring beetles (Coleoptera: Bostrichidae, Curculionidae; Platypodinae and Scolytinae) infesting rubberwood sawn timber in southern Thailand
巻頁: J For Res 16 (4): 302-308
題名: タイ南部におけるパラゴムノキ挽材を加害する材穿孔性甲虫類(鞘翅目:ナガシンクイムシ科,ゾウムシ科;ナガキクイムシ亜科,キクイムシ亜科)
著者: Teerapol Kangkamanee, Wisut Sittichaya, Aran Ngampongsai, Surakrai Permkam, Roger A. Beaver
所属: Faculty of Natural Resources, Prince of Songkla University, Thailand
抄録: Species diversity and infestation densities of rubberwood (Hevea brasiliensis Müll. Arg.)-boring beetles at sawmills in southern Thailand were investigated during July 2007 and March 2008. Twenty-two species of wood-boring beetles, nine bostrichids, eight scolytines and five platypodines, were identified. The powder post beetle, Sinoxylon anale Lesne (40%), is the single dominant rubberwood pest in the studied area. Other frequently captured species are Sinoxylon unidentatum (Fabricius) (18%), Heterobostrychus aequalis (Waterhouse) (10%) and Lyctoxylon dentatum Lesne (9%). The Shannon diversity index of rubberwood-boring beetles in the eastern coastal area was significantly (p < 0.01) greater than that in the western coastal area. The infestation density in the dry season was significantly higher than that in the wet season, but there were no significant differences between eastern and western coastal areas.
種類: 原著論文/生物-生態
Title: Differences in leafminer (Phyllonorycter, Gracillariidae, Lepidoptera) and aphid (Tuberculatus, Aphididae, Hemiptera) composition among Quercus dentata, Q. crispula, Q. serrata, and their hybrids
巻頁: J For Res 16 (4): 309-318
題名: カシワ,ミズナラ,コナラおよび雑種個体間における潜葉性蛾類(Phyllonorycter, Gracillariidae, Lepidoptera)とアブラムシ類(Tuberculatus, Aphididae, Hemiptera)の相違
著者: 畠義博,橋場拓冬,中村孝,北村真志,石田孝英,秋元信一,佐藤宏明,木村正人
所属: 北海道大学大学院環境科学院
抄録: Phyllonorycter属(Gracillariidae, Lepidoptera)の潜葉性蛾類およびTuberculatus属(Aphididae, Hemiptera)のアブラムシ類の種構成を北海道大学付属苫小牧研究林に生育するカシワ,ミズナラ,コナラおよびそれらの雑種個体間で比較した。これらの樹木個体の同定は,主に葉の形質を用い,カシワとミズナラの純林およびミズナラとコナラの混成林の個体を参照木とした判別分析に基づいて行った。その結果,本研究林においては,カシワーミズナラ,ミズナラーコナラ,コナラーカシワ間のすべての組み合わせの雑種個体が確認され,雑種個体の頻度は約10%であった。PhyllonorycterとTuberculatusの種構成はカシワと他2種間で異なったが,ミズナラとコナ間では異ならなかった。カシワと他2種では昆虫の樹種選択,成長,生存に関わる化学組成が異なり,それはこれら樹木の生態あるいは系統を反映していると考えられた。今回採集された蛾およびアブラムシ類は,カシワに特異的な種,ミズナラ・コナラに特異的な種,カシワと少なくともミズナラから採集された種の3群に分けられた。カシワとミズナラの雑種個体はカシワに特異的な種,ミズナラ・コナラに特異的な種の両者に加害されていた。
種類: 短報/社会経済-計画-経営
Title: A weeding-duration model for Larix kaempferi plantations in Hokkaido, northern Japan
巻頁: J For Res 16 (4): 319-324
題名: 道内のカラマツ造林地の下刈年数モデル
著者: 中川昌彦,菅野正人,八坂通泰,Priit Kõresaar
所属: 北海道立総合研究機構林業試験場道東支場
抄録: 一般化線形モデルを用いて道内のカラマツ造林地の下刈年数モデルを作成した。各造林地における下刈年数を応答変数、標高、傾斜、最大積雪深、年降水量、地質、土壌型、地位指数(市町村単位)、斜面方位および植栽型を説明変数として解析した。説明変数のうち、地質、土壌型、斜面方位、植生型はカテゴリカルデータである。応答変数はポアソン分布であると仮定し、リンク関数はログとした。これらの説明変数の全ての組み合わせで作成されるモデルのうち、AICが最小のものをモデルとして選択した。下刈年数モデル式は
下刈年数 = Exp (-0.0172833*地位指数 + 0.0014053*最大積雪深(cm) + 1.7417731)
となっていた。下刈年数は最大積雪深が深いほど長く、反対に地位指数が高いほど短くなっていた。このモデルは正確ではあるが精度は高くないため、個々の造林地における下刈の終了時期の判断に用いることはできないものの、カラマツの造林の収支計算モデルにおいては有用である。
種類: 短報/生物-生態
Title: An inoculation experiment of Japanese Bursaphelenchus nematodes on Japanese black and red pine, Pinus thunbergii and P. densiflora
巻頁: J For Res 16 (4): 325-330
題名: 日本産 Bursaphelenchus 属線虫のアカマツ、クロマツに対する接種試験
著者: 神崎菜摘,相川拓也,前原紀敏,市原優
所属: 森林総合研究所
抄録: 北米原産のマツノザイセンチュウ、Bursaphelenchus xylophilus は東アジアやヨーロッパ(ポルトガル)において、現地のマツ林の衰退を引き起こす侵入病原体である。一方、ヨーロッパでは在来のBursaphelenchus 属線虫が在来のマツ属樹種を枯死させる例が報告されている。このことから、本研究では、日本在来のBursaphelenchus 属線虫の日本在来のマツ属樹種に対するリスク評価のため、10種のBursaphelenchus 属線虫を用いてアカマツ、クロマツに対する病原性を調査した。この結果、マツノザイセンチュウ弱病原株、B. luxuriosae、B. sp. NK215(未記載種)、B. sp. NK224(未記載種)の4種がクロマツに対して弱い病原性を示した。しかし、これらのうち、日本在来種で、針葉樹を通常のホストとする NK224 は在来マツ属樹種に対する潜在的リスクと考えられた。また、他の2種に関しては、この弱い病原性は全適応的形質と考えられる。