Journal of Forest Research, Vol.26, No.6(2021年12月)

種類: 原著論文/Socioecnomics, Planning, and Management

Title:  Price premiums for certified roundwood: evidence from auction sales in Turkey

巻頁: J For Res 26 (6): 395-399

題名: 認証丸太の価格プレミアム:トルコにおけるオークション販売からの証明

著者: İdris Durusoy,Osman Özdemir

所属: Düzce University, Turkey

抄録: Around 6.5 million ha state-owned forests are certified by Forest Stewardship Council in Turkey. Roundwood originated from certified forests has been in the market for nearly a decade. Little is known about the impact of forest certification on the roundwood price. Price models were constructed to explore the price premium for certified roundwood using sales data collected from state forest enterprises in Bolu. Full sample models for sawlog and pulpwood revealed that forest certification provided a limited premium. Sawlogs had a 0.54% premium while pulpwood had none. In tree-type models, scots pine sawlog received a price premium of 1.74%, while black pine pulpwood and scots pine pulpwood fetched price premium by 1.9% and 2.2% respectively. Results of the study provide useful information to forest policymakers.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1940664

 

 

種類: 原著論文/Socioecnomics, Planning, and Management

Title: Challenges of Payment for Forest Environmental Services (PFES) in forest conservation: A case study in Central Vietnam

巻頁: J For Res 26 (6): 400-409

題名: 森林保全における森林環境サービスへの支払い(PFES)の課題:ベトナム中部における事例研究

著者: Hoang Phan Bich Ngoc,藤原敬大,岩永青史,佐藤宣子

所属: 九州大学大学院生物資源環境科学府

抄録: 森林を保全しながら地域住民の生計を改善するために、ベトナム政府は「森林環境サービスに対する支払い(PFES)」を2010年に開始した。本研究はPFESの実施状況を明らかにし、地域住民が直面する森林保全の取り組みの課題について考察することを目的とした。トゥアティエン=フエ省は、K係数を用いて森林の種類と状態に応じたPFESの分配を調整した最初の省である。本研究では、同省でPFESが実施されている7つの地域において、PFESに関与する政府職員や森林保全・開発基金の職員等にインデプスインタビューを行ない、地域住民を対象としたフォーカス・グループ・ディスカッションを実施した。その結果、同省で用いられているK係数は、「森林の状態(K1)」、「森林の機能(K2)」、「森林の種類(K3)」、「森林保全の難易度(K4)」の4つの要素で構成されていることが明らかになった。また地域住民の努力によって変化する「森林の状態(K1)」は、地域住民の森林保全に対する取り組みを促す唯一の要素であることも分かった。このことから、PFESを算出するためのK係数の範囲を拡大することで、地域住民の報酬を増やし、森林保全活動への参加の動機を高めることを提案した。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1955438

 

 

種類: 原著論文/Silviculture and Plant Sciences

Title:  Tree-cavity formation in the mature subtropical forests of Yambaru, Okinawa Island

巻頁: J For Res 26 (6): 410-418

題名: 沖縄島やんばる地域の成熟した亜熱帯林における樹洞の形成

著者: 高嶋敦史,中西晃,森下美菜,阿部真,齋藤和彦,小高信彦

所属: 琉球大学農学部

抄録: 沖縄島北部やんばる地域の亜熱帯林では,固有種を含む多くの種の生存にとって樹洞が重要な要素になっていると考えられている。そこで,本研究ではやんばる地域の成熟した亜熱帯林の2箇所に調査区を設け,深さが10cm以上ある樹洞を調査した。その結果,樹洞の密度は198個/haで,他の研究事例と比べて大幅に高くなっていた。イタジイ(スダジイ),イジュ,イスノキという主要3樹種の中で,イジュには両調査区を通じで樹洞が記録されなかった。イタジイとイスノキは,胸高直径(DBH)が大きくなるにつれ樹洞保有率が高くなっていた。また,イスノキはイタジイと比べてより小さいDBHで樹洞保有率が上昇していた。イスノキは,1本の幹に複数の樹洞を発生させていることが多かった。全樹種を通じ,キツツキ類などの穿孔によって生じた樹洞はまれで,腐朽によって生じた樹洞がほとんどであった。また,絶滅危惧種のケナガネズミによる利用が確認された樹洞が2個あり,それらは幹のDBHが約43cmで容積が0.09-0.16m3であるという類似した特徴を持っていた。やんばる地域では,樹洞を形成するような大径木を保存することが森林生態系の健全度維持のために非常に重要で,なかでも樹洞が多く発生し複数の生態学的役割を果たすイスノキは,森林管理計画を実行するうえで扱いが特に考慮されなくてはならない。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1955440

 

 

種類: 原著論文/Silviculture and Plant Sciences

Title:  Determination of intraspecific variation in seed weight, leaf functional traits, and sapling size of Betula ermanii using a common garden experiment

巻頁: J For Res 26 (6): 419-426

題名: 共通圃場実験によるダケカンバの種子重、葉の機能形質、稚樹サイズの種内変異の定量

著者: Aye Myat Myat PAING,陳淑芬,津村義彦,戸丸信弘,本間航介,門松昌彦,吉田俊也,小林元,飯尾淳弘,大住克博,種子田春彦,久本洋子,後藤晋

所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科

抄録: 地球温暖化が進行する中、冷涼や山岳地域に分布する森林樹木種のハビタット減少が深刻な問題になっている。変動する気候に対応するためには、対象樹種の種内変異を把握することが重要である。そこで、本研究では、天然分布をほぼカバーする11集団から亜高山性の広葉樹であるダケカンバの種子重、葉の機能形質、稚樹サイズの種内変異を調査した。各集団から集めた種子をバットに播種してコンテナ苗を育成し、均質な環境の温室内で育成する共通圃場実験を行った。種子重、葉の機能形質、稚樹サイズを応答変数、暖かさの指数、最寒月の最低気温、夏季降水量、最大積雪深を説明変数として、説明変数が応答変数に及ぼす影響を一般化線形混合モデルで評価した。種子重は正の、比葉面積と葉の窒素濃度は負の緯度クラインを示した。緯度に対するクラインの傾向は、既存の研究で検出されたものとは異なっており、その理由の一部は、気候条件や土壌の栄養利用可能性の地理的構造が関係していることが示唆された。本研究から得られた知見は、気候変動時代における山岳地域の森林生態系の保全に有効であると考えられる。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1964151

 

 

種類: 原著論文/Silviculture and Plant Sciences

Title:  The decline of Pinus thunbergii and P. densiflora trees in coastal forests from the mega-tsunami following the Great East Japan Earthquake

巻頁: J For Res 26 (6): 427-436

題名: 東日本大震災後の巨大津波を受けた海岸林クロマツとアカマツの衰弱・枯死

著者: 中村克典,水田展洋,相川拓也,磯野昌弘,市原優,小澤洋一

所属: 森林総合研究所東北支所

抄録: 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波により,東北日本の太平洋沿岸の海岸林は激甚な被害を受けたが,その主要な樹種はクロマツおよびアカマツであった。津波襲来の後も残存したマツ類で衰弱・枯死が見られたことから,被災海岸林の再造林にマツ類を使うことについての懸念が示されたが,そのような衰弱の規模や要因は明らかになっていなかった。我々は,異なった津波被害の様態を示していた6地域に設置した固定調査区で,クロマツおよびアカマツの単木ごとの衰弱・枯死発生経過を2年にわたって調査した。調査期間を通じ,クロマツ成木では,被災以前からの被陰や津波による強度の樹体損傷,土壌の排水不良のような激しいストレスを受けていたもの以外は順調に生存した。一方,アカマツでは海水への浸漬の影響が出やすかった。これらの結果は,日本で歴史的にも認められてきた海岸林植栽におけるクロマツの優位性,および海岸林の津波耐性を高める上での排水確保の重要性についての確たる根拠を示すものである。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1964150?src=

 

種類: 原著論文/Forest Health

Title: Clear-cut stands provide foraging habitats for open-space foraging bats in Japanese evergreen conifer plantations

巻頁: J For Res 26 (6): 437-447

題名: 日本の常緑針葉樹人工林内の皆伐地は開放空間採餌型のコウモリに採餌場所を提供する

著者: 牧貴大,安井さち子,上條隆志

所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科

抄録: 人工林は生物多様性が低いことが知られる一方,コウモリを含む野生動物の生息地として近年見直されている.本研究では栃木県の常緑針葉樹人工林(壮齢林~高齢林,以下閉鎖林23地点,皆伐地7地点)で,超音波録音装置(バットディテクター)を用い,コウモリの活動量及び採餌活動を調べた.採餌ギルドに対応する4つの音声タイプグループごと(ヤマコウモリ属/ヒナコウモリ属NYVE,キクガシラコウモリ属RH,アブラコウモリ属PI,ホオヒゲコウモリ属/テングコウモリ属MYMU)に,皆伐地と閉鎖林のコウモリの利用の比較および,閉鎖林内の林分構造とコウモリの活動の関係について検証を行った.その結果,統計解析のできなかったRHを除く3グループの活動量が皆伐地で有意に高いことが示された.また,解放空間で採餌を行うNYVEの活動量に対する採餌活動の比率も皆伐地で有意に高かった.閉鎖林の林分構造については,どのグループの活動量も有意な傾向はみられなかったが,NYVEの活動量に対する採餌音の比率が立木密度と有意に正の相関を示した.これらの結果から皆伐地がNYVEの採餌場所であることが示唆された.しかし,皆伐はコウモリの樹木ねぐらを破壊してしまう面もあるため,コウモリの保全を目指した森林管理には伐採と樹木の保育・保持のバランスを考慮する必要がある.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1945201

 

 

種類: 原著論文/Forest Health

Title: Selected microbial consortia promotes Dalbergia sissoo growth in the large-scale nursery and wastelands in a semi-arid region in India

巻頁: J For Res 26 (6): 448-454

題名: インドの半乾燥地域の大規模圃場と荒廃地における選抜微生物コンソーシアム によるマメ科シッソノキ(Dalbergia sissoo)の成長促進

著者: Raghu Hullenahalli Bettegowda,Anuroopa Nanjundappa,Ashwin Revanna,Harinikumar Kodihalli Manchegowda,Joseph Emmanuel Ravi,Davis Joseph Bagyaraj

所属: Centre for Natural Biological Resources and Community Development (CNBRCD), India

抄録: The performance of a selected microbial consortia (Rhizophagus fasciculatus, Azotobacter chroococcum, Bacillus coagulans and Trichoderma harzianum) on Dalbergia sissoo Roxb. ex DC. was investigated through large-scale nursery trials at three locations in the Mandya district of Karnataka state, India. At each nursery, 500 microbial consortia inoculated seedlings and 500 uninoculated seedlings were raised. The mean plant biovolume index and dry biomass of inoculated seedlings raised in three large-scale nursery trials were 42% and 39% higher, respectively, compared to uninoculated seedlings 180 days after sowing. Forty randomly selected inoculated and 40 uninoculated seedlings from each nursery were planted in wasteland at three locations, and their growth was monitored for nearly 6 years. The mean biovolume index of inoculated trees planted in the three wastelands was 136% higher compared to uninoculated trees 73 months after planting. Thus, the study shows inoculation with the selected microbial consortia that improves the growth of Dalbergia sissoo in the nursery and also when planted in degraded wasteland.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1955439

 

 

種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences

Title: Development of microsatellite markers for Meliosma arnottiana (Sabiaceae) disjunctively distributed in the Japanese archipelago

巻頁: J For Res 26 (6): 455-458

題名: 日本列島に隔離分布するフシノハアワブキ(Meliosma arnottiana)におけるマイクロサテライトマーカーの開発

著者: 村上将希,伊東拓朗,浅川彬,藤井伸二,牧雅之

所属: 東北大学生命科学研究科

抄録: フシノハアワブキとその変種であるサクノキは琉球列島と伊豆諸島に隔離分布する.これらは絶滅危惧植物にカテゴライズされているが,その遺伝的多様性に関する研究は乏しく,有効な保全対策がとられていない.そこで本研究では,遺伝的多様性の評価のために16組のマイクロサテライトマーカーを開発した.これらを用いて,フシノハアワブキ,サクノキの琉球列島,伊豆諸島の各集団各20個体で遺伝子型を決定した結果,1遺伝子座あたりの平均対立遺伝子数はそれぞれ3.00,5.31,ヘテロ接合度の期待値は0.233,0.513となり,多型性が認められた.また,琉球列島集団と伊豆諸島集団は有意に遺伝的に分化していることが示唆された.さらに,これらのマイクロサテライトマーカーの増幅と多型性の確認を,日本に分布する同属近縁種3種において行った.その結果,9つのマーカーにおいて,少なくとも1種以上で増幅が確認され,いずれのマーカーも多型性を示すことが明らかとなった.今回開発したマイクロサテライトマーカーはフシノハアワブキの遺伝的多様性の評価に有効であり,同属種においても利用可能であると考えられる.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1941561

 

 

種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences

Title:  Relationship between phenology and frost damage to female strobili of pine wood nematode-resistant clones of Japanese black pine (Pinus thunbergii): a case study in an experimental crossing garden during the spring of 2020

巻頁: J For Res 26 (6): 459-463

題名: クロマツのマツノザイセンチュウ抵抗性クローンの雌花の霜害とフェノロジーの関係:2020年春の実験交配園の事例

著者: 松永孝治,栗田学

所属: 森林研究・整備機構 森林総合研究所 林木育種センター 九州育種場

抄録: マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツの採種園における春の霜害の程度に影響する要因を明らかにするため,2020年の春に実験交配園内の抵抗性クロマツ13クローンの雌球花に生じた霜害を調査した。2020年の1月から3月の月平均気温は過去6年間より高かったが,2020年の4月の気温は低かった。雌球花の数は上方の枝で平均4.7個,下方の枝で2.7個であった。霜害による枯損は上方の枝で平均6%,下方の枝で平均22%の雌球花に生じた。一般化線形混合モデルを用いた解析によって,霜被害の割合が上方と下方の枝で異なること,雌球花の死亡率に有意なクローン間差があることが示された。各クローンの雌球花の死亡リスクは雌球花が開花するまでに必要な時間との間に負の相関関係があった。そのため,早い開花フェノロジーを持つクロマツクローンは春霜の被害を受けやすいと考えられた。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1961357

 

 

種類: 短報/Silviculture and Plant Sciences

Title: Development and characterization of EST-SSR markers for Pinus thunbergii

巻頁: J For Res 26 (6): 464-467

題名: クロマツのEST-SSRマーカーの開発とその評価

著者: Aziz Akbar Mukasyaf,田村美帆,山口莉未,手島康介,渡辺敦史

所属: 九州大学大学院農学研究院

抄録: 本研究では、クロマツの集団遺伝学的研究に寄与するため、10 EST-SSRマーカーを開発した。開発したEST-SSRマーカーの対立遺伝子の数は1〜6であった。ヘテロ接合体率の観察値は0.000〜0.707、同じく期待値は0.000〜0.720であった。PICは0.000〜0.669であった。血縁関係のない2個体(PI)および2個体の同胞(PI-Sib)が一致する確率の平均は、それぞれ0.540と0.719であった。本研究で開発されたEST-SSRマーカーは、これまでに開発されたマーカーと組み合わせることで、クロマツ集団の遺伝的多様性や遺伝的構造の理解に貢献すると考えられる。

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13416979.2021.1964152

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