企画シンポジウム

企画シンポジウムは、会員がコーディネータとなって企画する、森林科学に関する明瞭で簡潔にまとまったテーマをもったシンポジウムで、本大会ではS1からS10までの10のシンポジウムを開催します。発表者は公募せず、コーディネータが決定します。

S1. 保持林業――成果と経験、今後に向けて――
Retention forestry: results, experiences, and for the future

S2. 木質バイオマス供給の拡大に向けた研究開発の現状と課題
Current status and issues on research and development for expanding supply of wood biomass

S3. 気候変動に適応した降雪地域の森林管理を「気象学×森林水文学」の学際的な視点から探る
Exploring ways of forest management adopting climate change in snowing regions from the interdisciplinary perspective of “meteorology and forest hydrology”

S4. 林業はどこでやる? 林業採算性からゾーニングを考える
Where are Suitable Sites for Sustainable Forestry? Considering Forest Zoning focusing on Profitability

S5. 「森林サービス産業」の発展には何が必要か?
What is required to promote “Forest-related Service Industry” ?

S6. 生理部門企画シンポジウム「低温下で生きる」とポスター紹介
Tree Physiology Division Symposium “Alive under cold conditions” and poster introduction

S7. 変動環境下における大気‐森林間の物質交換と樹木の生理生態
Atmosphere-forest material exchange and tree physiological ecology under changing environment

S8. 森林教育研究のさらなる発展を目指して―森林、自然、木材を活用した教育の異分野連携の可能性を探る―
For seeking to extend forest education research activities: exploring possibilities for collaboration among different fields of education using forest, nature, and timber

S9. 竹林の機能評価と新しい価値の創出
Evaluating Bamboo Forest Functions and Innovating New Values

S10. 北海道における広葉樹の更新・育成・利用研究-これまでと、これから
Research on the regeneration, management and utilization of broad-leaved trees in Hokkaido

S1. 保持林業――成果と経験、今後に向けて――
Retention forestry: results, experiences, and for the future

コーディネータ:山浦悠一(森林総合研究所四国支所),山川博美(森林総合研究所九州支所)

趣旨

 戦後盛んに造成された日本の針葉樹人工林が主伐時期を迎え、各地で伐採されるようになった。そして成熟する資源状況を背景に、木材自給率の向上や林業・木材産業の活性化が期待されている。通常、人工林を主伐する際は皆伐が採用され、生育するすべての樹木が伐採・収穫される。しかし世界的には、森林の皆伐に対する批判を受けて保持林業(retention forestry)が1980年代に提案され、森林認証の認定要件とされるなど大きな普及を見せている。
 保持林業では森林を伐採する際、樹木の一部がその後の生物多様性や生態系の回復のために意図的に残される。そして日本国内でも、資源生産を取り巻く環境は大きく変化し、林業セクターでは木材を生産しながらいかに生物多様性を保全するかが重要な論点になりつつある。このような状況の中、北海道道有林で保持林業の実証実験が計画されて早14年が経過し、初期の成果がおおよそ出揃った。私たちはこの大規模野外実験でトドマツ人工林を主伐する際、混生する広葉樹を伐採せずに残している。
 本企画シンポジウムでは、道有林での実験の経緯と成果、保持林業を実施してきた事業体の感想や意識、九州と四国での保持林業の最近の取り組みを共有した上で、今後の保持林業の課題や展開について議論する。
構成及び演者(予定):
1. 保持林業実証実験が道有林で実施された経緯:土屋禎治(北の森づくり専門学院・元道有林課)
2. 保持林業実証実験の概要と主要な結果:尾崎研一(森林総研北海道)
3. 保持林業実証実験で残された樹木の動態:明石信廣(道総研林業試験場)
4. 保持林業の機会費用:津田高明(道総研林業試験場)
5. 北海道の実験・保持林業を現場で請け負って:高篠和憲(堀川林業)
6. 道東で保持林業を実施して:高森淳(三井物産フォレスト)
7. 九州・四国での保持林業:山川博美・山浦悠一
8. 今後の展開に向けて:山浦悠一
コメンテーター:中村太士(北海道大学)、伊藤哲(宮崎大学)、土屋俊幸(東京農工大学)

S2. 木質バイオマス供給の拡大に向けた研究開発の現状と課題
Current status and issues on research and development for expanding supply of wood biomass

コーディネータ :久保山裕史(森林総合研究所東北支所),相川髙信(PwCコンサルティング合同会社),高橋正義(森林総合研究所)

趣旨

 FIT制度の下で多数の木質バイオマス発電施設が新たに稼働を開始し、その発電容量の合計は原発5基相当となっています。その結果、国内の燃料用丸太供給は1000万m3を超すまでに増加し、他方で、木質ペレットや油ヤシ殻(PKS)の輸入も急増しています。国内では、建設資材廃棄物や製材等残材が伸びない中で、森林系のバイオマス供給が最大となっていますが、用材需給はあまり拡大しておらず、低質材の供給余力は低下している可能性があります。そうした状況を改善するべく、木質バイオマス供給の拡大に向けた様々な試験研究が行われております。そこで本企画シンポジウムでは、そうした取り組みの現状と課題について報告頂き、今後の木質バイオマス供給について考えたいと思います。

S3. 気候変動に適応した降雪地域の森林管理を「気象学×森林水文学」の学際的な視点から探る
Exploring ways of forest management adopting climate change in snowing regions from the interdisciplinary perspective of “meteorology and forest hydrology”

コーディネータ :荒田洋平(北海道立総合研究機構林業試験場),猪越翔大(名古屋大学大学院生命農学研究科),橋本朝陽(北海道立総合研究機構林業試験場)

趣旨

 寒冷地や高標高地における冬期の積雪は春先の融雪水として、農業用水や工業用水など生活に欠かせない貴重な水資源となる。一方で、融雪が活発な時期では、急激な河川の増水により洪水災害リスクを高める可能性がある。したがって、“降雪→積雪→融雪”の水循環過程の理解は、降雪地やその下流域における水資源・災害リスク管理の軸となる。日本列島は日本海で発生した水蒸気が、ユーラシア大陸からの冷たく乾燥した北西風に混じるため、日本海側を中心に世界でも有数の豪雪地帯となる。そのため、融雪水が人々の生活に占める役割は非常に大きい。一方で、近年の気候変動に伴う温暖化によって、日本列島を取り巻く“降雪”の状況に変化が生じている。
 「日本の気候変動2020」によると、日本海側の年最深積雪量は1962年以降で減少傾向にあり、今後、パリ協定の2℃上昇シナリオ(RCP2.6)が達成されたとしても21世紀末(2076-2095年)の平均年最深積雪量は現在(1980-1999年)の約50-70%に減少することが予測されている。加えて、温暖化は、積雪期の暖気による融雪+豪雨(Rain-on-snow)の発生頻度や規模を変化させる可能性がある。
 日本の森林は、その大部分が流域の上流側(=水源地)に分布している。そのため、森林の水源涵養機能の十分な発揮は、流域水資源管理や防災・減災対策において不可欠である。森林は樹冠による降雪遮断や日射減衰を生じさせることで、“降雪→積雪”や“積雪→融雪”の各プロセスに影響を及ぼす。森林伐採やその後の植栽木成長による積雪量や融雪速度の変化は水資源量や洪水リスクなどに関連することから、これらを踏まえた森林管理を検討していく必要がある。
 本企画シンポジウムでは、日本における「各地の“降雪”状況の変化」と「“降雪→積雪→融雪”と森林の関わり」の両テーマに関する話題を同じ場で共有することで、現在から将来にかけての降雪状況の変化に適応した森林管理の検討につながる議論の場としたい。

S4. 林業はどこでやる? 林業採算性からゾーニングを考える
Where are Suitable Sites for Sustainable Forestry? Considering Forest Zoning focusing on Profitability

コーディネータ :荒木眞岳(森林総合研究所),八木橋勉(森林総合研究所)

趣旨

 近年、我が国の人工林資源は利用期を迎えているとされ、主伐・再造林が推進されている。しかし、主伐収入から再造林費用を賄えないことも多く、主伐面積に対する再造林面積の割合は低いのが現状である。林野庁は、2030年には自給率48%にあたる年4,200万m3の木材の国内生産を目標とする一方で、約1,000万haある人工林を将来的に660万ha程度に減らすとしている。現在より少ない人工林面積から将来にわたり木材を安定的に供給していくためには、まず林業採算性に基づく森林のゾーニングが重要であると考える。その上で、採算性の高い林地では、主伐後はエリートツリーなど成長に優れた系統も用いて確実に再造林を行い、短伐期による持続的な木材生産サイクルを確立することが必要であろう。一方、採算性の低い林地では、広葉樹林などへの林種転換も検討していく必要があろう。
 森林総合研究所では、農林水産技術会議委託プロジェクト研究「日本全国の林地の林業採算性マトリクス評価技術の開発」において、(1)航空レーザ計測による樹高と機械学習を用いた「地位」の推定モデルの構築、(2)エリートツリーなど「系統による成長優位性」の評価、(3)作業種や将来的な林道敷設ポテンシャルを加味した「地利」の評価を軸とした、人工林の林業採算性を予測する技術開発に令和5年度から取り組んでいる。
 本企画シンポジウムでは、地位の推定、系統による成長優位性、地利の評価という3つのトピックに関して、それぞれ寺岡行雄先生(鹿児島大学)、榎木勉先生(九州大学)、齋藤仁志先生(岩手大学)に、これまでの知見などについてお話ししていただく。また、森林総研の中尾勝洋、松下通也、白澤紘明から、プロジェクトで取り組んでいる内容について紹介する。総合討論では、コメンテーターとして横井秀一先生(造林技術研究所)と梶本卓也先生(新潟大学)をお迎えし、多くの会員のみなさまも交えて、林業はどこでやる?をテーマに森林のゾーニング手法について議論したい。

S5. 「森林サービス産業」の発展には何が必要か?
What is required to promote “Forest-related Service Industry” ?

コーディネータ :平野悠一郎(森林総合研究所多摩森林科学園),高山範理(森林総合研究所),八巻一成(森林総合研究所関西支所)

趣旨

 森林サービス産業の創出・推進は、林野庁の主導で2019年度から本格化した施策である。この施策は、健康、観光、教育の三部門での森林活用事業の発展を促すものである。その狙いは、森林空間を活用した体験サービス等を提供することで、幅広い人々の健康で心豊かな生活や企業で働く人の活力向上に貢献するとともに、山村地域に新たな雇用と所得機会を生み出すことである。
 しかし、その実現に向けては、学術的・実践的に検討しなければならない課題も多く残されている。本企画シンポジウムでは、これらの課題について、様々な視点から網羅的に検討することで、今後の森林サービス産業の発展に向けて、何が必要となっているかを明らかにする。

S6. 生理部門企画シンポジウム「低温下で生きる」とポスター紹介
Tree Physiology Division Symposium “Alive under cold conditions” and poster introduction

コーディネータ :則定真利子(東京大学),小島克己(東京大学),斎藤秀之(北海道大学),田原恒(森林総合研究所),津山孝人(九州大学)

趣旨

 講演会「低温下で生きる」と生理部門のポスター発表の1分紹介とで構成する生理部門の企画シンポジウムを開催します。
 生理部門では、個体から細胞・分子レベルまでの幅広いスケールの現象を対象に、多様な手法を用いて樹木の成長の仕組みを明らかにする研究に携わる方々の情報・意見交換の場となることを目指しています。従来の研究分野の枠組みにとらわれることなく、さまざまなスケール・手法で樹木の成長の仕組みの解明に携わる多くの皆様に、生理部門での口頭・ポスター発表にご参加頂くとともに、本シンポジウムにご参集頂きたいと考えております。
 講演会では、寒冷な環境での樹木の生存を見つめます。東京大学の種子田春彦さんに、亜高山帯の針葉樹が寒冷な環境でいかに生きているかについて研究の成果をご紹介頂きます。帯広畜産大学の春日純さんには、ブドウの冬芽の越冬機構に関する研究成果をご紹介頂きます。森林総合研究所林木育種センターの遠藤圭太さんには、樹木冬芽の越冬適応機構に関する研究成果を踏まえた林木遺伝資源の凍結保存技術開発に関する研究の成果をご紹介頂きます。寒冷な環境での樹木の生き様への理解が深まる機会となることを期待しています。
 講演会に引き続き、生理部門でのポスター発表者に1分間で内容を紹介いただきます。
 生理部門では、会場での議論の場を補完する形で、口頭発表およびポスター発表に関する議論のためのオンラインスペースを用意することを検討しています。詳細については、生理部門のFacebookページ(森林学会_生理部門/Tree_Physiology_JFS)やX(@TreePhysiol_JFS)などで随時ご案内していきます。

S7. 変動環境下における大気‐森林間の物質交換と樹木の生理生態
Atmosphere-forest material exchange and tree physiological ecology under changing environment

コーディネータ :渡辺 誠

趣旨

 産業革命以降、化石燃料の消費増大に代表される人間活動によって、森林を取り巻く環境は劇的に変化している。人間活動の活発化に伴う、様々な生元素の循環量の変化やそれに伴う気候変動、大気汚染といった環境変動は森林生態系に大きな影響が世界的に懸念されている。このような環境の変化は、樹木の光合成などの生理活性を始めとして、土壌の養分・水分の利用性や病虫害に対する抵抗性といった様々なプロセスに複雑な変化を与え、森林の生産性や各種機能に影響を与える。そして、そのフィードバック作用として、森林からの養分・水分および揮発性有機化合物などの放出特性も変化する。数十年以上かけて蓄積される森林バイオマス、環境資源としての森林の持続的利用、そして流域レベルでの物質循環の将来予測を行う上で、これら人為起源の環境変化と森林・樹木の間に存在する相互作用の理解は避けて通ることができないきわめて重要な課題である。しかしながら、これらの相互作用は多岐に渡るプロセスの集合体であるため、単一の研究分野からのアプローチではその全体像を理解することが困難である。そこで本シンポジウムでは樹木生理生態学を基礎として、様々な分野における最新の知見を持ち寄り、森林に対する環境の変化の影響と将来の展望を議論する。個別事例に関わる研究に加えて、北海道大学の加藤知道氏より太陽光誘発クロロフィル蛍光による生態系光合成の観測とモデル化に関する研究成果をご講演頂き、広域スケールにおける光合成生産に関する議論を深める機会としたい

S8. 森林教育研究のさらなる発展を目指して―森林、自然、木材を活用した教育の異分野連携の可能性を探る―
For seeking to extend forest education research activities: exploring possibilities for collaboration among different fields of education using forest, nature, and timber

コーディネータ :山田 亮(北海道教育大学),東原貴志(上越教育大学),杉浦克明(日本大学)

趣旨

 日本森林学会では、第129回大会から教育部門が設置された。近年、地域の森林環境における自然体験活動の展開が拡がるなど、教育に関する研究により一層の推進が期待されている。ただし、森林教育の活動は、実践する場所の条件が多様で、活動内容の幅が広がってきている一方で、研究の展開は課題が多く、発展途上となっている。森林教育の研究では、人を相手にした教育活動について多角的に読み解く必要があり、森林科学の一部門として発展を図るには、自然環境をフィールドとした森林科学の多様な分野の研究者、環境教育など関連する内容を含んだ教育学の研究者、また教育活動の実践者と連携し、実践にあわせた研究の方法の検討をすすめていくことが求められる。
 第129回大会〜第135回では、森林教育に関わりが深い教育分野の関係者とともに企画シンポジウムを開催し、教育研究の深化と拡がりの可能性を見出すことができた。特に前回の第135回では、自然体験活動を中心とする野外教育や環境教育などの実践者と研究者からの報告があり、教育活動から得られる効果についての議論が深められた。
 本大会では、これまでの流れを踏まえ、森林教育研究のさらなる展開を目指し、近接領域の関係者から研究や実践事例を集めたシンポジウムを企画する。発表者は、研究者でありながら、森林や自然の現場における教育活動の経験が豊富であり、学校教育現場、森のようちえんの活動、地域活性化へ向けた取り組みなど幅広く、多くの示唆に富む報告がなされることを期待している。森林科学の知見の普及に関心のある研究者や人材育成に関わる多くの学会員に参加いただき、森林教育の発展を追求していく機会としたい。

S9. 竹林の機能評価と新しい価値の創出
Evaluating Bamboo Forest Functions and Innovating New Values

コーディネータ :久米朋宣(九州大学農学研究院),篠原慶規(宮崎大学農学部),藤原敬大(九州大学農学研究院)

趣旨

 カーボン・ニュートラル、SDGs、ネイチャーポジティブなどの世界的な大きな潮流の中で、森林資源をより積極的に活用し、循環型の資源利用システムを構築しようという機運が世界中で高まっている。森林資源の中で、その旺盛な成長から、モウソウチク等の竹林への期待も大きく、竹林利用の促進が世界各地で進められている。しかし、日本や台湾では、生活様式の変化に伴って竹林は積極的に利用されなくなり、管理放棄された竹林が拡大する傾向にある。管理放棄竹林の拡大は地域の生態系に負の影響を与えることが報告されており、また、近年の温暖化傾向に伴い、竹林の生息可能域が今後ますます拡大すると懸念されている。
 竹林資源が有効に活用されず、管理放棄竹林が拡大するという現状を打開し、竹林資源の循環利用を促進するためには、何が必要なのだろうか。健全な科学的手法に基づき竹林の多面的機能を理解し、多面的機能を高度に発揮する竹林の姿を提示できれば、政府・自治体と地主・事業体との間で目指すべき目標を共有することができ、持続可能な資源利用の正のサイクルが回り始めるかもしれない。
 竹林の多面的機能は、水源涵養機能や炭素吸収機能など環境保全に関わるものから、文化・歴史・芸術に関わるものまで、多岐にわたる。竹林の持つ機能については、古くから研究がなされており、近年の科学技術の発展とともに、竹林の環境保全に関わる機能の定量的評価も進んできた。これらの知見を組み合わせることで、竹林の新しい価値を創出し、竹林利用の機運をより一層高めることができるかもしれない。
 今回のシンポジウムでは、竹林の多面的機能について、文理の枠を超えて分野横断的かつ包括的に理解し、多面的機能を高度に発揮する竹林とはどのようなものなのか、竹林を中心とする新たな地域内経済循環システムを生み出すための新しい価値とは何なのか、を考えたい。

S10. 北海道における広葉樹の更新・育成・利用研究-これまでと、これから
Research on the regeneration, management and utilization of broad-leaved trees in Hokkaido

コーディネータ :吉田俊也(北海道大学),酒井明香(北海道立総合研究機構林産試験場),大野泰之(北海道立総合研究機構林業試験場)

趣旨

 北海道でかつて広く行われてきた、択伐(抜き伐り)・天然更新による天然林施業は、一部の実践を除けば、その意図とは逆に、森林の劣化(大径・良材の減少、更新不良)をもたらしました。天然林での伐採が抑制されてから約20年が経過した現在、輸入量の減少や地域産材への注目の中で、とくに広葉樹の生産・利用に再度注目が集まっています。この機会に、私たちは、生態系の保全も含めた持続可能な資源管理を確立しなければなりません。資源の回復に向けた更新・保育技術の発展とともに、トドマツをはじめとする人工林内の侵入木としての広葉樹資源の再評価やその利活用、広葉樹を活かした地域再生に向けた幅広い研究が必要です。これまで、広葉樹の更新・育林の目標は通直な大径材生産が主流でしたが、現在はニーズの変化や加工技術の進歩もあり、「これまでの規格外」が「これからの規格」に移行しつつあります。その中で、研究においては、変化に準じた資源把握技術や育林技術、需給マッチングを叶える物流システムへの展開も求められています。このセッションでは、10年ぶりに北海道で行われる森林学会大会に合わせ、北海道産広葉樹を真の意味で資源循環させるための更新・育成・利用研究のこれまでとこれからと題し、研究者と実践者による一連の発表を予定しています。