要旨本文 |
近年、全国各地で野生動物が市街地に出没し、農業被害の拡大が問題となっている。特にイノシシが市街地に出没する機会の増加要因として、秋季における重要な餌資源である堅果豊凶が密接に関わっている可能性がある。そこで、本研究では静岡県立森林公園内において、次の3つの方法で野生動物と堅果の関係を明らかにすることを目指した。1つめは、シードトラップによる調査で、スダジイ堅果の落下量と時期及び状態を明らかにするために、スダジイ1株当たりにシードトラップを2個、合計10株に20個設置した。1週間に1度シードトラップの内容物を回収し、堅果の落下量とイノシシやニホンザルの撮影頻度とに強い正の相関があることが明らかになった。また、堅果は地上に落下する前に、リスやネズミなどに採食されていた。2つめは除去実験で、地上に落下した堅果の採食量の推定を目的として行った。上部に覆いがないコントロール処理区、地表から5cmを金網で覆う金網処理区、目開き2cmの立方体で覆うゲージ処理区の3つの処理区を10組設け、各処理区にスダジイ健全堅果を20個用意した。1週間に1度確認し、哺乳類による採食量が最大であることが明らかになった。 |