要旨本文 |
京都府宇治市にある京都府立莵道高等学校の敷地内には「莵道の森」と呼ばれる学校林があり,科学部では2017年から林内でカメラトラップによる動物調査を実施している。2021年10月から2023年9月の2年間,林内の環境が異なる2つの地点A(二次林で広場になっている),B(スギ林で倒木が多い)で調査を実施し,撮影された哺乳類を比較した。どちらもニホンジカが最多であったが,Aに比べるとBはニホンジカの割合が低かった。また,Bでは動物が倒木の上にいる姿が多く見られ,倒木の有無がニホンジカ以外の動物の撮影に関係していると考えた。ニホンジカを除くBで撮影された動物の多くは倒木の上を移動することを好む傾向があると仮説を立て,Bで撮影された動物が,地上にいるか,倒木の上にいるかを記録した。その結果,倒木の上にいる割合が高い動物の上位5種(ハクビシン,ムササビ,テン,ニホンリス,アライグマ)のうちテンを除く4種は,AよりBの撮影数が多く,倒木のある環境を好んでいるようだった。テンはBよりAの撮影数が多かったが,これはどんぐりなどの餌を求めてだと思われる。以上のことから,倒木が動物に与える影響は少なくないと考えられる。 |