Journal of Forest Research Vol 14, No 3 (2009年6月)
種類: 総説/環境
Title: Forest fire in India: a review of the knowledge base
巻頁: J For Res 14 (3): 127-134
題名: インドにおける森林火災:科学的知見の現状に関する評論
著者: Shijo Joseph, K. Anitha, M. S. R. Murthy
所属: Department of Natural Resources, International Institute for Geo-information Science and Earth Observation (ITC)
抄録: Forest fire has profound impacts on atmospheric chemistry, biogeochemical cycling and ecosystem structure. This feedback interaction may be hastened in climate change scenarios. In view of this, the present day knowledge about the forest fire condition in India has been reviewed. Operational monitoring, geospatial modeling and climate change uncertainties are discussed. Indicators for forest fire assessment and the role of geoinformatics tools in developing those parameters are identified. The need for developing an adaptive management strategy from the existing experience is emphasized, and specific points are recommended sector-wise with short- and long-term visions.
種類: 原著論文/社会経済-計画-経営
Title: Patterns and factors in early-stage vegetation recovery at abandoned plantation clearcut sites in Oita, Japan: possible indicators for evaluating vegetation status
巻頁: J For Res 14 (3): 135-146
題名: 再造林放棄地における初期の植生回復パターンとその要因:植生回復可能性を判断するための指標
著者: 長島啓子,吉田茂二郎,保坂武宣
所属: 九州大学農学研究院
抄録: 我が国の林業を取り巻く情勢が厳しさを増す中,皆伐後に再造林されない再造林放棄地が増加している.再造林放棄地の植生回復に関する研究は林分レベルでいくつか行われているが,広域的に数多く分布する再造林放棄地を管理するには,より広域的な研究を通して一般的な植生回復過程を把握する必要がある.本研究は,再造林放棄地における初期の植生回復パターンと要因を県レベルで理解することを目的とすると共に,再造林放棄地において将来的に形成されるべき目標林型をツブラジイやアラカシなどから成る常緑広葉樹林か,コナラやクヌギなどから成る落葉広葉樹林と仮定し,これらの目標林型に回復するかを評価するのに有効な指標についても議論を行った.クラスター分析の結果,植生回復の初期段階から5つの植生タイプ(常緑高木群,常緑高木-先駆性落葉低木群,先駆種群,落葉高木群,落葉低木群)が見られることが判明した.前2者の植生タイプは順調に常緑広葉樹林に回復すると考えられたが,後3者はいずれの目標林型にも回復する兆しは認められなかった.除歪対応分析(DCA)の結果,再造林放棄地の面積が小さいこと,隣接した常緑広葉樹林を有すること,さらに放棄年数が長めであることが,常緑樹の侵入を促進する要因となっていることが明らかになった.これらの要因は放棄地の植生回復可能性を判断する際にも重要な指標となる.また,前生樹の存在が放棄地における初期の植生を予測する上で重要な指標となることも示唆された.
種類: 原著論文/環境
Title: Tree-ring-width chronology of Larix gmelinii as an indicator of changes in early summer temperature in east-central Kamchatka
巻頁: J For Res 14 (3): 147-154
題名: カムチャッカ中東部の初夏気温の変動を反映したグイマツ年輪幅標準曲線の構築
著者: 佐野雅規,古田史,末田達彦
所属: 愛媛大学大学院連合農学研究科
抄録: クロノツキー国立公園の森林限界の開放林分にて、グイマツ(Larix gmerinii)55個体から110本の年輪コアを採取し、これをもとに過去378年の年輪幅標準曲線を構築した。試料採取地のみならず、広くカムチャッカ中部に生えるグイマツの成長に気候が強く効いていたので、本研究で得た標準年輪曲線は他サイトのそれと変動が同調していた 。気候に対する年輪の応答を調べたところ、5月下旬から6月下旬までの40日間の気温が年輪成長を左右することが分かった。年輪気候学で使われている厳密な検証に耐える気候復元には至らなかったものの、年輪–気候の対応関係は統計的に有意だったので、この標準年輪曲線を初夏気温の代替記録として過去の気温変動を評価した。全体として周期数十年で変動する気温を過去から現在に向けて眺めると、西暦1660–1680年代は寒冷期を、それ以降1800年までは緩やかな温暖化傾向を、それに続く1910年までは僅かな寒冷化傾向を、以後現在に至るまでは温暖化傾向を、それぞれ示した。本研究で明らかになった20世紀の昇温傾向は、他の高緯度地域の復元気温と整合していた。
種類: 原著論文/生物-生態
Title: Within-crown structural variability of dwarfed mature Abies mariesii in snowy subalpine parkland in central Japan
巻頁: J For Res 14 (3): 155-166
題名: 多雪地に生育するオオシラビソの当年性シュート・枝構造の樹冠内変異
著者: 森章,水町衣里
所属: 横浜国立大学大学院環境情報研究院
抄録: 非常に多くの雪が積もる中部山岳地帯・立山連峰の弥陀ヶ原湿原では、矮小化したオオシラビソが生育している。本研究では、この矮小化したオオシラビソ成木の葉・当年性シュート・枝の構造が、樹冠内でどれほど変化するのかを調べた。樹冠下部よりも樹冠上部の方で、当年性のシュートや枝の総重量が大きく、軸あたりの葉量も多かった。一方、樹冠上部の当年性シュートは、樹冠下部のものに比べて、総重量に占める葉の割合が低かった。これらの結果から、樹冠上部の当年性シュートや枝では、支持・維持コストがかかるものの、より多くの光を利用することのできる構造になっていること、また、樹冠下部では、シュート内の自己被陰を避け、光をより効率よくとらえるような構造になっていることが示唆された。このように、樹冠内の葉・当年性シュート・枝といった各レベルの構造が変化することは、豪雪地域でも樹冠を維持し、生育することができる要因となっていると考えられる。
種類: 原著論文/生物-生態
Title: Variation in germination character of Robinia pseudoacacia L. (Leguminosae) seeds at individual tree level
巻頁: J For Res 14 (3): 167-177
題名: ニセアカシア種子の発芽特性における母樹レベルでの変異
著者: 真坂一彦,山田健四
所属: 北海道立林業試験場
抄録: 外来高木種ニセアカシアにおける種子の休眠や発芽特性を明らかにするため,種子に対し,種皮への傷つけ処理や冷湿処理,変温処理,高温処理,そして寒晒し処理を施した。種子の休眠や発芽特性は3つの母樹(Trees K,B,そしてI)によって大きく異なった。傷つけ処理により,Tree Kはほとんどが物理的休眠を示し,Tree Bは物理的休眠性をもたないことが分かった。Tree Iは,いずれは何の処理なしでも発芽する弱い物理的休眠性を示した。Tree Kにおける物理的休眠は長時間の高温で解除されたため,Tree Kは自然界で山火事に反応していることが示唆された。Tree Iは,長時間・高温を除く広い範囲の処理に反応した。対照的に,Tree Bは冷湿処理中でさえ吸水し,そのうちのいくつかは発芽した。Tree Bの多くは,おそらくは微生物や菌によって冬季間の埋土中に死んだ。Tree IとBは冬季間の寒晒し処理によって物理的休眠を獲得したため,莢が樹冠に着いたまま越冬するのはエアリアル・シード・バンクであることが示唆された。この結果は,ニセアカシアは冬の条件によってさまざまなレベルの休眠状態の種子を生産することを示唆している。
種類: 短報/環境
Title: Fine-root production in response to nutrient application at three forest plantations in Sabah, Malaysia: higher nitrogen and phosphorus demand by Acacia mangium
巻頁: J For Res 14 (3): 178-182
題名: マレーシアサバ州の3種の人工林における、養分添加に対する細根生産の反応:Acacia mangiumの高い窒素とリン要求
著者: 稲垣昌宏,稲垣善之,加茂皓一,Titin Jupiri
所属: 森林総合研究所立地環境研究領域
抄録:マメ科広葉樹、非マメ科広葉樹、針葉樹では、窒素とリンに対して異なる要求を示す。マレーシアサバ州の、Acacia mangium(AM)、Swietenia macrophylla (SM)、Araucaria cunninghamii (AC)の3種の人工林林分において、5ヶ月間にわたるイングロースコア法による試験によって、窒素(N)とリン(P)添加に対する細根生産の反応を調べた。AM林分ではNとPの混合添加区で有意な細根成長がみられたが、SM林分とAC林分では成長が見られなかった。AM林分では根粒数が、N添加区とNとPの混合添加区で有意な増加を示した。SM林分とAC林分では、養分添加に対し細根生産への反応が見られなかったが、AM林分ではSM林分やAC林分と比較して林床の窒素条件が良いにも関わらず、NとPの両方に高い要求を示した。これらの結果はマメ科植物の養分要求が大きいことによって説明することができた。結論として、Acacia mangium人工林では、施肥等を行っていない状態ではNとPの両方が制限になっており、立地条件によってはこれまで考えられていたよりも窒素施肥が効果的である可能性があると考えられた。
種類: 短報/生物-生態
Title: Effect of Frankia inoculation on the growth of Alnus sieboldiana on unsterilized soil
巻頁: J For Res 14 (3): 183-187
題名: 非滅菌土壌におけるフランキア菌接種のオオバヤシャブシ成長への影響
著者: 山中高史,小林久泰,岡部宏秋
所属: 森林総合研究所
抄録: 根粒菌フランキアの接種がオオバヤシャブシ実生苗の成長へ及ぼす影響を非滅菌土壌で調査した。苗畑土壌またはヤシャブシ生育地土壌を採取して、そこへ、無菌土壌で育てておいたオオバヤシャブシ苗を移植した。オオ
バヤシャブシ苗は、予めフランキア菌を接種して移植時に根粒を形成させておいたもの、移植時に菌を接種したもの、または菌を接種しなかったものを用意した。これら苗を非滅菌土壌へ移植したのち、3、10、16週目に、
実生の成長量、根粒形成量、窒素固定活性を測定した。移植16週目のオオバヤシャブシ成長量は、苗畑土壌では、移植時に根粒を形成させておいた場合、移植時に菌を接種した場合よりも良かった。一方、ヤシャブシ生育地土
壌では、これら2つの処理で明瞭な差は見られなかったが、菌を接種しなかった場合よりも成長は良かった。
種類: 短報/生物-生態
Title: Effect of simulated acid fog on membrane-bound calcium (mCa) in fir (Abies firma) and cedar (Cryptomeria japonica) mesophyll cells
巻頁: J For Res 14 (3): 188-192
題名: モミ(Abies firma)およびスギ(Cyptomeria japonica)葉肉細胞内の膜結合カルシウム(mCa)に対する擬似酸性霧の影響
著者: 鴫原亜土,松村唯子,松本潔,井川学
所属: 神奈川大学工学部物質生命化学科
抄録: 神奈川県西部に位置する丹沢大山ではモミ原生林の立ち枯れが著しく見られ、その原因の一つとして酸性霧の影響が考えられる。しかしながら、スギ林の衰退はこれまでに報告されていない。葉肉細胞内の膜結合カルシウム(mCa)への影響を調査する為、モミおよびスギ苗木に対し長期間にわたり擬似酸性霧を曝露した。その結果、pH 3処理区のモミ当年生針葉中のmCaレベルはpH 5処理区のそれに比べ冬季に著しく低下したが、スギでは両処理区間に有意な差は見られなかった。このことは、モミの酸性霧に対する感受性がスギのそれに比して高いことを示している。