日本森林学会誌105巻2号(2023年2月)
[論文] スウェーデン・フィンランド・ドイツにおける中小規模森林所有者のグループ化構―PEFCグループ認証の地域性―
早舩 真智(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所)
キーワード: 森林認証, 小規模森林所有者, 組織化, 森林所有者組合, 林産企業
2023 年 105 巻 2 号 p. 45-53
https://doi.org/10.4005/jjfs.105.45
[要旨] 日本における持続的な森林管理の課題の一つとして,小規模分散的な所有構造が挙げられるが,グループでの森林認証の取得など,森林所有者による新たな連携も現れ始めた。しかし,そのグループ形態は地域ごとに多様であり,森林管理の集約化および全国的な展開へとは至っていない。本稿ではグループ認証の先進地域であるスウェーデン,フィンランド,ドイツを対象とした現地調査および資料分析を実施し,グループ認証の取得構造を明らかにすることを通じて,各国の中小規模森林所有者のグループ形態の類型を提示することを目的とした。その結果,(1)スウェーデン;森林所有者組合や林産企業などの所有者への森林管理サービスを担う組織による自由競争的なグループ(個別組織型),(2)フィンランド;全国に存在する森林管理組合を基盤とした地域グループ(全国組織型),(3)ドイツ;州有林,共有林,個人有林などの森林所有者が参加する州単位での地域グループ(地域組織型)というように,3国とも自国の森林管理に適したグループ形成を標準化し,認証規格の順守とコストの軽減による持続的かつ効率的な認証システムを戦略的に選択・構築してきたことが明らかになった。
[論文] 芽かきがセンダン幼齢木の幹曲がりと成長に与える影響
横尾 謙一郎(熊本県林業研究・研修センター)ほか
キーワード: センダン, 芽かき, クローン, 幹曲がり(最大矢高), 通直材生産
2023 年 105 巻 2 号 p. 54-61
https://doi.org/10.4005/jjfs.105.54
[要旨] 芽かきによるセンダンの幹曲がりの矯正効果を検討するために,1,100 本/haで植栽された3クローン(1型,18型およびM型)の幼齢林において,地上高4.5 mまで芽かきを行い,その処理数と地上高,2年生時における長さ4 m当たりの幹曲り(最大矢高)と直径成長を対照区(非芽かき区)と比較した。芽かき区では,対照区に比べ直径成長の抑制がみられたものの,同処理区内におけるクローン間差は認められなかった。M型は,他のクローンに比べて,芽の総発生数だけでなく,2年生時に伸長した幹(地上高2.5~4.5 m)における芽の発生数が少なかったことから,芽かきの作業コストを軽減できるクローンであると考えられた。芽かき区の最大矢高は,2.22~2.56 cmと対照区の11.20~15.33 cmと比較して有意に小さかった。また,最大矢高のクローン間の有意差は,対照区ではみられたが,芽かき区ではみられず,芽かきは,クローンに関係なく幹曲りを矯正する効果があると考えられた。以上のことから,センダンにおける芽かきは,ばらつきが少ない通直な丸太生産に寄与する施業であることが示唆された。
[その他:書評] 清和研二著「スギと広葉樹の混交林 蘇る生態系サービス」
山浦 悠一(森林総合研究所四国支所)
2023 年 105 巻 2 号 p. 62-63
https://doi.org/10.4005/jjfs.105.62